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横浜地方裁判所 平成9年(わ)379号 判決

本籍

横浜市中区福富町東通三番地の五

住居

横浜市中区元町一丁目一四番地の三

会社役員

堀内昭夫

昭和一一年六月九日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、検察官渡口鶇及び弁護人山下基之(主任)、小口克巳(副主任)各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金三二〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、横浜市中区元町一丁目一四番地の三に居住し、同区福富町東通三番地の五に本社がある株式会社堀内商興の代表取締役であるとともに、鶴岡實が東京都渋谷区宇田川町二四番八号所在の堀内ビル二階において経営する個室マッサージ店「エデンの園」の利益の一部を分配金として受領していた者であるが、自己の所得税を免れようと企て、右分配金収入のすべてを除外し、右収入を借名で貸し付けるなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成四年分の実際総所得金額が六四八五万二五九一円であったにもかかわらず、平成五年三月一五日、横浜市中区山下町三七番地の九所在の所轄横浜中税務署において、同税務署長に対し、平成四年分の総所得金額が一〇四八万七〇〇〇円で、これに対する所得税額が一一五万一七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二七三一万一六〇〇円と右申告税額との差額二六一五万九九〇〇円を免れ

第二  平成五年分の実際総所得金額が一億〇七三〇万一五六三円であったにもかかわらず、平成六年三月一五日、前記横浜中税務署において、同税務署長に対し、平成五年分の総所得金額が一〇六七万七〇〇〇円で、これに対する所得税額が一一三万三七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額四八五三万六一〇〇円と右申告税額との差額四七四〇万二四〇〇円を免れ

第三  平成六年分の実際総所得金額が一億〇一一〇万三七二〇円であったにもかかわらず、平成七年三月一三日、前記横浜中税務署において、同税務署長に対し、平成六年分の総所得金額が七四四万七〇〇〇円で、これに対する所得税額が三万一九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額四三三〇万七六〇〇円と右申告税額との差額四三二七万五七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠)

括弧内の番号は証拠等関係カード記載の検察官請求番号を示す。

判示事実全部について

一  被告人の第一回公判調書中の供述部分

一  被告人の公判供述(第四回)

一  被告人の検察官調書(乙二ないし一一)

一  金子敏昭の検察官調書(甲三四、三五)

一  永井公輝の検察官調書(甲三六)

一  鶴岡實の検察官調書謄本(甲三七ないし四一)、大蔵事務官に対する質問てん末書(甲四五)及び同謄本(甲四二ないし四四)

一  捜査報告書(甲二)

一  税の納付状況照会に対する回答書(甲三)

一  大蔵事務官作成の調査書(甲五ないし三三)

(法令の適用)

罰条 いずれも所得税法二三八条一項、二項

刑種の選択 いずれも懲役刑及び罰金刑

併合罪加重 懲役刑につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判事第二の罪の刑に加重)罰金刑につき同法四五条前段、四八条二項

労役場留置 罰金刑につき刑法一八条

執行猶予 懲役刑につき同法二五条一項

(量刑の理由)

本件におけるほ脱所得、ほ脱税額とも多額であり、その態様も巧妙であって、本件犯行は悪質といえる。ほ脱行為の反社会性を考慮すれば、行為者には、自由刑、財産刑の両面で相当厳しい刑罰をもって臨まなければならない。

しかし、被告人は、右ほ脱を行った期間について修正申告を行い、これに伴う所得税について分割納付しつつあることや本件について反省していると思われること及び被告人は昭和五〇年に常習賭博罪で懲役一年・三年間執行猶予の判決を受けたほか前科のないことなどの事情を考慮して、懲役刑については今回に限り執行を猶予することとする。

(求刑 懲役一年六月、罰金四〇〇〇万円)

(裁判官 松田浩養)

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